谷川岳 幽ノ沢左俣 中央ルンゼ

2024年10月22日 メンバー たぬき KNZ

天候 終日快晴

長い夏がようやく終わり快適な秋の山行を楽しもうと計画するも休日と天候の兼ね合いが合わず、既に晩秋を迎える始末。
昨今、ただでさえ短い秋は貴重。暑さから解放され快適な山行を楽しみたい身としては、次々と悪天により流れる山行計画に半ばウンザリし山と向き合うモチベーションが下がる一方の日々。
しかし、ようやく天候と日程が合点し秋を満喫しに谷川岳に行ってきました。
今回選択したエリアは幽ノ沢。昨今では幽ノ沢となると8割以上のクライマーはV右を選択するであろう。しかし今回は左俣中央ルンゼを選択。直近の記録は少ないが某ガイド本の見出しには幽ノ沢の一押しとの文言が記載されていた為以前より気になっていたルートだ。
ただ、幽ノ沢は支点の少なさ老朽化、更に岩質が脆い事よりガイドブックの文言は半信半疑で挑戦する。

幽ノ沢出合にて夜明けを迎える算段にてインフォメーションセンターより自転車でアプローチ開始。
少し前まで暑いと文句を言っていたが、山岳地帯での早朝は停滞していると凍えるように寒く、文句を言う。人間は贅沢な生き物だと内心思うが、それはさて置き片隅にしまいペダルをひたすら漕ぐ。
算段通り幽ノ沢出合には夜明け前に到着し軽く準備を済ませ、ヘッデンの明かりが要らなくなる頃より幽ノ沢を遡行開始。
数日間、まとまった降雨が無かった為、幽ノ沢の遡行は快適に考えていたが、思いのほか濡れている為、悪かった。

大滝にはFIXが有り有難く使わせてもらいフリーで抜ける

慎重に遡行し大滝はFIXが有った為有難く使用し難なく通過し二俣へ。

二俣からネット上に上がるライン取りは様々だった。どれが正解なのか良く分からないが、個人的に取ったルートを記載する。

【アプローチ】
本来、二俣から左俣へ進路を取るのが正規なのだろうが、左俣出だしはランぺ状、更に濡れていて非常に悪い感じだった為、右俣へ入り70m程高度を上げた後藪尾根を左へトラバースし左俣出だし滝上へ降り立つ。

二俣へ到達すると幽ノ沢の岩壁が一望

問題は無く左俣の出だしを処理するよりは此方のラインの方が安全に思える。
左俣へ入ってから、50m程遡行し直ぐに右岸の藪へ高巻く。なんとなく踏まれている様だがこれは錯覚か?無駄に体力は消耗するが沢の遡行より気楽だ。灌木を手掛かりに高度を上げる。沢通しでも行けるかもしれないが、神経を使うだろう。選択は個人任せる。
二俣右岸を40分程詰めると本流と支流の二俣が眼下に確認出来た。左は本流の滝沢大滝へ右は枯滝の中央ルンゼと認識し二俣(左俣上部の二俣)上部へクライムダウンし沢床へ降り立ち直ぐに右に有る藪尾根をトラバースし涸れ沢へ。涸れ沢をを詰めれば自然と中央ルンゼカールボーデン基部へ導かれた。
ルーファイ能力が有れば問題ないアプローチに感じた。
涸れ沢を詰めあげると一気に視界が広がり中央ルンゼカールボーデンが現れる。傾斜はさほどで無いが何れフラットシューズに履き替える為カールボーデン末端にて装備を整え取り付きへ。

カールボーデン基部より中央ルンゼを見上げる 上部顕著なハングがライン取りの目印だ

【左俣 中央ルンゼ】 ( )内は個人的な体感グレード スケル(参考文献 日本の岩場 上)
1P(Ⅳ 50m)
出だしの小ハングからの処理。ハングは小さく高差もあまりないがホールドが甘く若干悪い。支点はそれなりに有った。

1P 小ハング越から 2~3手でハングは越えられるが出だしと有って慎重に通過 上部は階段

ハングを越えれば傾斜の緩いスラブ。終了点が見当たらなかった為そのままロープを延ばしブッシュにて切る
2P(Ⅲ 40m)
傾斜の緩いスラブの処理。ランナーは取れないが登攀には問題無。リング1本とブッシュをまとめて切る

2P 傾斜の緩いスラブの処理 ランナー無しと言うより要らない

3P(Ⅲ 30m)
傾斜の緩いスラブの処理。ランナーは1本残置にて取った。ハーケン2本打ち切る

3P スラブの処理 幽ノ沢にてランナウトに耐えられないと登攀は厳しいだろう

4P(Ⅲ⁺ 20m)
スラブの処理。左にリングは目視出来たがそちらに吸い寄せられるとかなり悪くなる。中央付近にラインを取れば問題無。若干ルーファイか問われる

4P 上部顕著なハング目指す

5P(Ⅳ⁻ 20m)
カンテと言うより右のスカイライン目指し高度を上げる。フランケからカンテにラインを取ると悪いがそのままフランケ基部からバンドを辿りカンテへ回り込むと容易だった。カンテ峡上部(凹角基部)にて残置1本とカムにて切る

5P カンテと言うより巨大すぎてスカイラインの表現が有っている感じだ
5P終了点よりフォローを見下ろすと高度感が尋常でない

6P(Ⅳ A1 20m)凹角へ入る一手がA1になる。残置はそれなりに有るがボロスリングが垂れる支点までが遠い スリングが無くなるとA1でもかなり厳しく感じた

6P 人工セクション 凹角出だしの1,2手が人口になる 支点は老朽化が進みメンタル勝負だった

凹角上部は立っているがガバなので問題無。凹角を抜けて直ぐにリング1本と残置ハーケンにて切る
7P(Ⅲ 50m)
草付スラブの処理 ブッシュにて切る
8P(Ⅲ 50m)
草付スラブの処理 左方ルンゼ終了点へ突き上げ登攀終了

8P もはや階段 グイグイ高度を上げ終了点へ

中央壁の頭を経て堅炭尾根へ約1時間程で到達。

中央壁の頭にて
終了点より20分程 更に堅炭尾根へ20分程詰める

下山は廃道を辿り芝倉沢へ。当初はβルンゼを下降する予定にしていたが稜線上は朝露の影響か濡れていたので芝倉沢へ変更した。

下降は芝倉沢へ 景観は良いがルーファイが忙しく、それどころ出は無い

終日天候に恵まれ錦秋とまではいかなかたっが紅葉も堪能でき充実した山行だった。
幽ノ沢はトポとは異なる。更に支点も老朽化が進み挑戦するならば早めの方が良い様に感じる

ads
最新情報をチェックしよう!