2025年9月23日 メンバーたぬき げんちゃん
天候 ガス後曇り 麗は晴れ
烈火の夏。数年前までは異常気象と揶揄されていたが、毎年異常が重なり続けば日常になる。 高温が夏を引き伸ばし秋が短縮される昨今、9月に入ったにも関わらず平野部で秋を見つけるのは難しくなってきた。 そうなれば快適な秋を求め山に行くのは山屋の性だろう。
そんな考えを抱き錦秋が楽しめそうな谷川岳へ行ってきました。
最近では多くのクライマーは一ノ倉沢へ足を進める。快適で多くのラインが引かれた一ノ倉沢は楽しいが、通い過ぎるとマンネリ化するのは贅沢過ぎる悩みか。
そんな思いからか新鮮さを求めマチガ沢へ。以前登攀した事は有るが記憶は10年程前。今となっては、殆ど山行状況を喪失し新規同様の気持ちで向かう。楽しみだ。
谷川岳インフォメーションセンターよりマチガ沢出合ににて日の出を迎える算段にてアプローチ開始。
最近は一ノ倉沢、幽ノ沢が登攀対象だった為自転車のアプローチが大半だったが、徒歩にて序盤から足を進めると新鮮だった。
しかし足を進めるにつれ白む空は曇天に覆われ薄っすら対岸に望む白毛門はガスに包まれる。先人の伝えから白毛門にガスが掛かると谷川の天候は良くないと言う認識から夜が明ける前から萎える。
マチガ沢出合にて算段通り夜が明けた。目視するに深いガスに覆われたマチガ沢。
稜線はともかく中間部から深いガスが掛かっている状況を目視すると気が萎えモチベーションはどん底だった。
敗退覚悟で厳剛新道よりアプローチ開始。
気温はさほど高くは無いが、低い曇天に覆われ急登からのアプローチは体感的にサウナ状態だった。大汗を掻きながら一般道離脱地点の第一見晴し台へ。此処から右下に見えるマチガ沢へ明瞭な踏み跡を辿り離脱し入渓。

直ぐに大滝が現れ右岸の弱点より抜け、分かりにくいシンセン沢出合を右手に見送りスラブ滝へ。この時期には珍しく巨大な雪渓が残っていた。

遡行には問題は無いが崩落の可能性を考えるとあまり気分は良く無く足早に通過し釜を持つ滝よりゴリュジュ帯へ。概ね沢伝いに遡行できるが何か所か高巻く区間も有った。

登攀スキルと言うよりルーファイスキルが試される区間だ。しかし肝心のルーファイも濃いガスに覆われた状態では不安を抱きながらの遡行だった。

迷いやすいとされる四ノ沢、六ノ沢の出合もガスではっきりしない為、方角を確認しながら東南稜を目指す始末。
取り付き直下まで来ると今までの深いガスは一気に晴れ目前には東南稜の岩壁が突如現れた。第三者から見れば最高の演出の様に見えるが、不安を抱きながら遡行して来た身としては単純にワクワクだった。

更に濡れてヌルヌルだろうと諦めていた岩は乾きワクワクを後押しする。
準備を整え登攀開始。( )内は個人的な体感グレード スケル
【東南稜】
1P(Ⅳ⁺ 40m)
東南稜と有るが出だしは顕著なルンゼから離陸。階段状を詰め上部ハング気味を右上。この区間の岩が非常にヌメリ嫌らしい。幸い残置スリングが数本垂れていた為迷わずA0にて抜ける。ヌメリ区間を抜ければ短いスラブを処理し終了点へ


2P(Ⅳ 45m)
ラインは右のコーナークラックか左の凹角が選べる。前者を選択。出だしの壁は濡れていたがホールドはガバ。スタンスもステミングが効くので問題なくコーナークラックを抜ければ左上にラインを切り返し高度を上げ終了点へ

3P(Ⅲ 40m)
顕著なリッジの処理。稜線まじかの巨大ピナクル基部へ。リング2つにて切る

事実上の登攀終了点。ロープをたたみ草付を5分程登れば国境稜線へ突き上げる。

登攀中もガスが掛かったり晴れたりを繰り返していたがピークへ突き上げる瞬間はガスが切れていた。
多くのハイカーに出迎えられ誇らしさと照れくささが入り交じる中、後片付け。
ガチャを片付ければハイカーと化し一般道より下山。