北穂高岳 滝谷第四尾根

2021年8月5日~6日  メンバーたぬき Osue

天候 5日晴れ時々曇り 6日終日快晴

本格的に山を始める前に縦走路から望む滝谷の荒々しい岩壁に張り付くクライマーの姿が印象的だった。 そしてその光景は滝谷登攀に憧れを抱いた。
本格的に山を始め滝谷の存在は常に頭の片隅に有るも、日程と天候が合わず先延ばしして行く中ようやく日程 天候 パートナーの条件が一致し、以前抱いた憧れを現実にすべく滝谷へ岩を楽しみに行ってきました。
今回用意した日程は2泊3日の行程にて1日目、北穂までのアプローチ。2日目、四尾根登攀。3日目、ドーム中央稜登攀のち下山の行程を計画したものの、3日目が天候が不安定なため四尾根登攀のち下山と言う行程で行ってきました。

5日 北穂高岳幕営地までのアプローチ。早朝、上高地よりアプローチ開始。ハイシーズンとも有ろうに連休前の平日のためか登山者は疎ら、平坦な登山道をたどり横尾まで足を運び圧巻な存在の屏風に見送られ徐々に傾斜を増す登山道に久しぶりの重荷が応える中、涸沢へ到着。テント村は無く疎らなテントが存在する。
テントでくつろぐ登山者を横目に、これより北穂までの急登に足も心も重い思いに鼓舞し牛歩にて高度を上げ幕営地到着。 近くに雷鳴がするも夕立もなく1日目幕営にて行動終了。

屏風岩に見送られ涸沢へ

6日 日の出前より行動開始。一旦北穂小屋まで足を運び最終準備をする中、日の出を迎える。雲一つない快晴に快適な登攀が約束され、下降地点目印で有る松濤岩より一般道を離脱しC沢の下降へ。事前の調べよりC沢の下降は悪いと聞いていたが、想定を遥かに超える悪さに慎重に時間をかけながら取り付きの目印になるスノーコル目指し高度を下げる。

C沢の下降 想定以上に悪い

 遠目にもスノーコルは目視できるが、これも想定以上に下方に有り事前調べの甘さに反省。C沢二俣出合よりスノーコルに上がり簡単な岩場を上がれば明瞭に踏まれた平坦な踏み跡をたどり四尾根取り付きへ到着。 取り付きより望む光景は荒々し岩壁に囲まれ生命がこの場所に足を踏み入れてはいけない雰囲気を醸し出す。「飛ぶ鳥も通わぬ」や「岩の墓場」と言われるフレーズが正に合っている場所だが山屋にとっては魅力のある場所に感じる。

下降したC沢前景 ある意味四尾根の核心だった

  準備を整え登攀開始。( )内は個人的な体感グレード スケル

【滝谷 第四尾根】
1P(Ⅲ⁺ 40m)階段状のフェースより高度を上げる。積木状に重なる岩が非常にもろく神経を使う。カムにて支点構想しピッチを切る

四尾根登攀開始 岩が脆くグレード以上に悪い


2P(Ⅲ⁺ 50m)引き続き階段状のフェースより高度を上げ左に降り曲がるように痩せたリッジを詰めAカンテ手前まで
3P(Ⅳ⁻ 40m)Aカンテの登攀。スッキリとしたカンテで取り付きより見上げるフォルムは、Aに見える。岩は安定しているBカンテ手前まで

Aカンテ 形状もA字に見えるスッキリしたライン


4P(Ⅳ⁺ 40m)Bカンテの登攀。ツルっとしたカンテ。

ツルっとしたBカンテ 正面にはツルム正面壁

5P(Ⅱ 45m)水平なリッジを歩く。出だしの一枚岩の通過が思いのほか嫌らしい最後ギャップを超えCカンテ手前まで
6P(Ⅳ⁺ 20m)Cカンテの登攀。ツルっとしたカンテ。よく見ればカチだがホールドスタンスはある。短いながら高度感あるピッチ。カンテを登り切り短くピッチを切る

Cカンテ 短いが高度感を楽しめるピッチ

7P(Ⅲ⁺ 45m)脆い凹角の登攀上部の巨大ピナクルの間を潜るように高度を上げる
終了点は巨大ピナクルを潜った所に有るが少し手前で切った

脆い凹角に慎重に高度を上げる


8P(Ⅳ⁻ 40m)巨大ピナクルを潜り左上する様にフェースに高度を上げ上部凹角のクラックへ。ホールドスタンスは豊富で岩も比較的安定していた。ツムルの頭直下の大テラスにてピッチを切る。ロープが屈曲したので非常に重かった。
9P(懸垂 25m) ツムルのコル目指し懸垂 事前の調べでは下方にもう一つ懸垂支点が有るとの事だったが見当たらず頭上の視点より懸垂。
コルにつき見返すと下方に懸垂支点を確認できたが、テラスに居る時点では見つけにくい
10P(Ⅳ⁺ 40m)スッキリしたフェースより高度を上げる。上部抜け口が短いチムニーになりチムニーの処理が嫌らし。終了点を見逃しDカンテ直下にて支点構造しピッチを切る
11P(Ⅴ 20m)ルート上の核心ピッチであるDカンテの登攀。カンテ直下で切ったのでいきなり核心の処理。巨大なサイコロを2個重ねたようなルート。ランナウトしボルダームーブなので精神的にきついピッチ。カンテを抜ければザレを辿りハンガーにてピッチを切り登攀終了。

ボルダームーブで抜けるDカンテ

時計を見れば正午を回った所、本日中の下山も射程圏内で明日の天候は不安定な事から予定していたドームの登攀は中止し下山を決意。

登攀を終えて一枚 喜びもつかの間この後上高地まで一気に下山


そうと決まればロープをたたみ急な草付を詰め一般縦走路へ突き上げ一気に天場へ。
パッキングを済ませ14時下山開始。登攀した余韻など何処かに置いて来たように下山し上高地へ18時30分到着。

夕暮れの上高地より日本アルプス


行程的に非常にきつい2日間でしたが内容の濃い2日間になり充実した山行になりました。
憧れを抱いた滝谷は現実になり今後は冬季への課題へと変わり精進。

ads
最新情報をチェックしよう!