甲斐駒ヶ岳 赤石沢奥壁ダイヤモンドAフランケ赤蜘蛛ルート

2022年9月4日~5日  メンバー たぬき Mtaka

天候 4日 ガス後小雨

5日 晴れのちガス

昨シーズンより何度計画を立て日程を確保しただろうか。相性の悪い甲斐駒ヶ岳。
計画を立てる度に天候に振り回され中止を余儀なくする度、悔しさとやるせない気持ちが満ちる。当たり所の無い矛先は、もはや絶対に登攀すると言う執念に変わっていった。
そんな心境の中、突然連休を確保する事が出来いつも通り天気予報とにらっめっこ。
確保した休みの天候は直前で快晴では無かったが明転し山行を決意。執念を晴らす為、甲斐駒ヶ岳へ高所登攀を楽しみに行ってきました。
今回目指すルートは恐らく無雪期の甲斐駒では看板ルートである赤蜘蛛ルート。
このルートを知ったのはいつ頃だったかはもう覚えて無い。ただ山を始めて間もない頃からルート名は知っていた。その時は無縁の存在と思っていたが、山にのめり込むにつれ無縁の存在は憧れに変わっていった。その憧れを現実にする為、甲斐駒ヶ岳赤石沢奥壁ダイヤモンドAフランケ赤蜘蛛ルートへ挑んできました。
今回の山行は1泊2日の行程。軽量化する為小屋泊での行程で挑戦します。

【4日】
初日、七丈小屋までのアプローチ後、赤蜘蛛ルートの取り付き付近までの偵察の予定の為この時期に関しては遅めのアプローチ開始。過酷な黒戸尾根の定評があるにも関わらず休日の駐車場は満車状態で内心驚く。
直近で確認していた天気予報は晴れに明転したが現地に着くと晴れとは無縁の空模様だったが天気予報に期待を込めアプローチ開始。
登りだして直ぐに山域はガスに覆われる。サウナ状に化した黒戸尾根には閉口。
閉口すれば動かすのは足のみ。ひたすら急登に喘ぎ高度を上げ正午前には七丈小屋へ到達。準備をし明日の行程の為偵察へ向かう。
小屋でくつろぎ過ぎた為か出だしが遅れ終始ガスに覆われた山域はよりガスが深くなり時折衣服を濡らす始末。取り合えず下降地点である八合目岩小屋の確認を済ませ小屋泊にて快適な終日を過ごし行動終了。

【5日】
本日の行程はアッタックしそのまま下山する為、深夜より行動開始。前日の天気予報のハズレから当日の天候も不安だったが夜空には星が望み登攀意欲が増す中、八合目岩小屋へ。前日偵察出来なかった為、ヘッデンでの明かりでは下降路は非常に分かりずらかった。案の定ルートミス。
20~30分程タイムロスした後、正規ルートに復帰。正規ルートに戻ればテープ、フィックスが明瞭で安堵しながら取り付きへ。アプローチに迷うも取り付きには日の出と共に到着。朝日を浴びたAフランケの岩壁は急峻にそびえ圧巻の一言だった。

Aフランケ大岩壁
圧巻の一言

その反面この壁を登る事を考えると壁からの威圧を受け、登攀意欲と複雑に混ざり合う。準備中は前者の方が優勢だったが、準備を終え壁と向かい合うと後者一色。
準備を整え登攀開始。
【ダイヤモンドAフランケ赤蜘蛛ルート】
1P(A1 25m)
終始ボルトラダー。出だし2ピン目が若干遠い為、ストックを使いプリクリした後離陸。ハングの切れ目目指し左上気味に高度を上げる。

1P ボルトラダーで離陸開始

2P(5.8 40m)
垂直に伸びる綺麗なコーナークラックを辿り高度を上げる。ハンドサイズのクラックはジャムが良く効くが所々濡れ状態は良くない。濡れている区間はカムエイドで抜ける。途中20m付近で終了点が有ったが無視し上部の終了点へ。カムで補強しハンギングビレイ

2P 綺麗なコーナークラックを辿る
所々染み出しが有り悪い

3P(A1 25m)
直ぐ左に伸びるフィンガークラックに打たれたボルトを目指しトラバースした後ボルトラダー。上部に覆いかぶさるV字ハング目指し高度を上げる。ハング直下で終了点が有ったがロープスケルは15m程だったのでピッチを切らずハングを越える。ハング直下はボルトはかなり近い間隔で打ってあったので以外に容易。ハングを乗り越した後ピッチを切る

上部のハングが威圧的

4P(Ⅳ A1 30m)
薄被りの垂壁をボルトラダーで抜け上部は脆い草付のフェースを右上に見えるテラス目指し高度を上げる。草付帯は脆く非常に悪かった
5P(5.7 25m)
大テラスより凹角を辿り左のカンテを回り込む様に高度を上げる

5P 立った凹角からカンテへ フリーで抜ける
5P終了点から上部に伸びるスーパークラック 圧巻の一言

6P(AA1 40m)
ルート上の核心ピッチ。天に伸びる綺麗なクラックにラインを取る。出だしはボルトラダーで離陸し中間部よりAA1となる。フィンガーサイズのクラックの為、#0.5前後のカムが有効だった。上部は再び残置が現れるが間隔が遠いので所々AA1で抜け終了点へ。高度感が凄まじい中ハンギングビレイ

6P ルート上の核心ピッチ 出だしはA1中間部よりAA1

7P(A1 30m)
カンテを右に越えフェースをボルトラダーで高度を上げる。

7P 恐竜カンテを越える

8P(A1 25m)
スラブ上のフェースを人工で登り上部樹林帯の大木で切る

8P スラブ上のフェース
徐々にブッシュが目立ち始める

9P(Ⅲ 25m)
ブッシュ混じりの岩場を抜ける。岩は苔むしていて濡れていると非常に悪い。残置は無くルーファイに神経を使う。ラインが屈曲するので短く切る。
10P(Ⅲ 25m)
苔むした一枚岩を慎重に登れば明瞭な踏み跡に導かれAフランケの頭に有る岩屋に突き上げ登攀終了。

登攀を終えAフランケの頭にて一枚

登攀終了時刻は16時前だった。下降のアプローチに迷った事もあり、明るい内に一般道まで戻りたい気持ちから登攀の喜びに浸る間もなくデプローチ開始。幸い明るいと踏み跡は明瞭に確認出来、すんなり一般道へ到達。
下山の黒戸尾根にひたすら喘ぎ21時前に駐車場へ戻る。長い一日だった。

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