北穂高岳 滝谷クラック尾根

2022年9月11日~13日  メンバー たぬき夫妻

天候 11日 晴れのちガス

12日 晴れのちガス

13日 晴れ

夏も終わり高所登攀の時期も終盤に差し掛かる中、滝谷に岩を楽しみに行ってきました。
今年の無雪期は終始天候に振り回され非常に山行計画を立てづらかったが、今回も同様だった。
前日まで天気予報はあやふやなコメントを記載する。確かに天気図を見て、高所地帯では絶対的な晴れは約束できないのは明瞭だった。しかし夏季に快適な高所登攀を出来るチャンスを無駄には出来ない欲から、天候不良からの敗退覚悟も視野に入れ、北穂高岳 滝谷クラック尾根に行ってきました。

11日 早朝の上高地よりアプローチ開始。日中、観光客が主の上高地だが早朝は登山者が行きかう静かなエリアを抜け、ひたすら平坦な林道を辿り横尾を通過。圧巻の屏風に見送られ涸沢へ正午頃到着。

雪の無い涸沢カール

疎らに立つテントでくつろぐ登山者に恨めしさを抱きつつ、目的地である北穂高を目指します。幕と登攀装備を背負っての最後の急登は、ひたすら喘ぎ牛歩にて山頂直下の幕営地へ到着。
予報通り天候は不安定で夕方より辺りはガスに包まれ翌日の登攀に不安を抱きつつも幕営にて行動終了。

12日 不安を抱いていた天候が的中した。前日からのガスはより深くなり深夜には幕を雨粒が叩く音がする。山屋にとっては不快極まり無い音で日の出数時間前まで続いた。
予定していた行動開始時刻。
当初、日が昇った直後にB沢下降を予定し行動開始を計画していたが、この時点で敗退が濃厚に感じたので二度寝を決め込んだ。  しかし日の出時刻に達すると今まで深いガスに覆われていた周囲は一気に日の光を迎える様消えていった。まるで太陽がガスを焼いている様だった。青空が広がりチャンスは無駄には出来ない。
急いで食事を流し込み準備を整え下降地点のB沢を目指す。
北穂小屋を通過し大キレット方面へ15分程下ったコルに大胆にもB沢入口の表記。山屋からすれば此処が入口ですよの表記に伺える。
しかしそんな楽観的な心境では無く、下降地点より望むB沢は北面に面し日が当たらず、さらに急斜面にガレを積んだ光景は陰鬱とした光景だった。

B沢の下降
陰鬱とした雰囲気が漂う

【B沢 アプローチ】
B沢下降のペイントより下降開始。出だしよりガレだ酷い。左岸寄りに進路を辿りを辿り15分ほどで1回目CSの懸垂下降。

CSの懸垂下降

更に下って7~8分で2回目の懸垂下降(ここはクライムダウン可)更に7~8分程の下降で目印である、杭が打たれFixが有る登り返し地点へ到達。此処までB沢入口より30分程だった。(2回の懸垂地点には支点有。50m1本で可能)

登り返し地点
有難くFIXと鉄杭が有った

Fixを登り更に右上に見える凹角を辿るとハンガーが打たれた懸垂地点へ。此処から岩壁を背に左下に見えるバンドへ斜め懸垂、途中振られ止めにカムを使用した。
バンドへ降り立つと踏み跡を辿り直ぐにバンド崩壊地点より左上~右上しクラック尾根取り付きへ。(此処までB沢下降地点より1時間程)

当てにならない天気予報では正午前よりガスの予報。出だしが送れ、更に前夜からの降雨の為岩は濡れている。
登攀スピードが重視される為、終始リードにて登攀開始。

【クラック尾根】  ( )内は個人的な体感グレード、スケル〈トポとは異なる〉
1P(Ⅲ⁺ 25m)
階段状の巨大な凹角状から高度を上げ、右上の切れ目を目指す。非常に浮石が多く神経を使う

1P クラック尾根登攀開始
壁は濡れ浮石多く悪い

2P(Ⅴ 40m)
出だし5m程の垂壁を乗り越し左上に伸びる易しいリッジに進路を取る。リッジの通過は易しいだろうが濡れていると非常に悪い。上部に見える顕著なピナクル直下できる

2P 出だしの垂壁を越え上部のピナクル直下まで

3P(Ⅲ 20m)
ピナクル脇を右に越え旧メガネのコルの通過。ロープが上下に蛇行する様に進む為スタックに注意。この崩落地の通過は非常に神経を使い対岸のフェース直下の狭い基部にて切る

3P 旧メガネのコルの通過し対岸のフェース基部まで

4P(Ⅲ⁺ 25m)
正面にはクラックの走ったフェースすが有るが条件が悪い為フェースを右に回り込み脆い凹角へ進路を取りジャンケンクラック基部へ

4P フェイスを右から回り込み高度を上げる

5P(Ⅴ⁻ 25m)
右のワイドか左のハンド。後者を選択。岩は硬く快適な登攀。上部クラックから右上するトラバースの方が嫌らしいが、非常に楽しいピッチ

5P 核心ピッチであるジャンケンクラック 岩は硬く快適

6P(Ⅳ⁻ 50m)
〈脆い凹角〉と有るが下部からすれば安定している様に感じた。凹角を抜けちょっとしたフェースを抜け左上に見えるカンテを越えガラガラのルンゼ末端へ到達。そのままガレ

6P 脆い凹角から上部はガラガラのルンゼへ

を詰めCS直下スラブまで
7P(Ⅲ 50m)
Ⅲ級程のスラブを辿り上部巨大なCSを左より越え再びガレを詰め大テラスまで

7P 巨大なCSを左から巻き再びガレへロープ一杯伸ばす

8P(Ⅳ⁻ 25m)
凹角より高度を上げザレた斜面のテラスで切る

8P 脆い凹角の通過
この頃になるとガスが深くなってくる

9P(Ⅳ⁻ 25m)
トポではバンドを左上と有るがガスで良く分からない。直上し上部に見える四角いピナクル目指し高度を上げると、北穂小屋テラス末端に突き上げた。

9P 最終ピッチ
上部の四角いピナクル目指せば北穂小屋テラスへ突き上げる

正午前に登攀終了。天候に煽られ約3時間半の登攀時間だった。
登攀を終え振り返ると途中よりガスに巻かれた。天気予報に信用が持てなかった為、常にガスに巻かれる事に非常に緊張を強いられた登攀だったが、振り返れば楽しさが満ちる。  結果論だが。

登攀を終えて周囲はガス一色だった

翌日はドーム中央稜を予定していたが、相変わらず天気予報は不明瞭。
悪い方向の天気予報は当たるもので正午より高峰はガスに包まれた。
天候に振り回されるのはウンザリな為下山を開始。このまま上高地を目指しても良かったがゆっくり下山し横尾まで。

13日 横尾より下山
早朝から見上げる高峰はガスが掛かる
アルアルだがドーム中央稜の登攀中止を自分の中で正当化し上高地を目指し山行終了。

天候が不安定な中、奇跡的に登攀日に天候が持ち良い高所登攀を楽しむ事が出来ました。

ads
最新情報をチェックしよう!