谷川岳 幽ノ沢中央壁 正面フェースルート

2024年6月15日

メンバーたぬき KNZ ISK

天候 終日快晴

例年であれば6月中旬は梅雨入り直前の長雨の為、山行を行える機会は少ないが今シーズンは梅雨入りが遅れる。自然の摂理としては多大な影響になるだろうが、山屋にとっては嬉しい天候。
だが安易な考えはさて置き目前に迫る梅雨入り前の貴重な晴天予報の中、駆け込み的に岩を楽しみに谷川岳へ行ってきました。
今回目指すは幽ノ沢。初夏前の山行の情報は少なく雪渓の状態に不安を抱くも、パートナーが数日前に幽ノ沢へ入り、雪渓の状態を確認済みの為不安なく山行を実施することが出来た。
恐らく昨今、幽ノ沢へ足を踏み入れるパーティーは9割以上がV右を選択するだろう。しかし今回は以前より気になっていた中央壁に引かれた正面フェースルート。冬季を想定し地形やライン取りを考えながら楽しんできました。
中芝新道が廃道になった為下降へ時間が掛かる事を想定し深夜のアプローチ。
幽ノ沢出合にて準備をと整えると同時に夜が明け、遡行開始。出合より雪渓は無く、数日間降雨が無かった為か磨かれた沢壁に快適なフリクションにて遡行。
大滝直前にて雪渓が現れだす。大滝上部付近まで雪渓は有るがシュルンドが開き大滝へ乗り移るのには神経を使った。

大滝は上部の方まで雪渓は有ったがシュルンドが開き慎重に通過

大滝を通過すると雪渓は無くなるが再び二俣直下にて現れる。右俣へ進むと直ぐに雪渓は無くなりチェーンスパイクの脱着が面倒だった。ピッケルは持参したが不使用。

数か所 雪渓崩壊個所を通過

二俣の詰めはほぼ夏道のラインを辿りカールボーデンへ。徐々に高度を上げるにつれ今回目指すルートの取り付き点で有るトーフ岩が明らかに確認出来、更にアプローチラインも明瞭に確認できた。

カールボーデンから中央壁が美しい

ある程度高度を上げ暖広場にて準備を整える。クライミングシューズへ履き替え取り付き点までフリーで。ラインとしては右俣リンネ下部からトーフ岩目指し左上するイメージだった。取り付きは小テラスにハンガー2本設置されていた。

【中央壁 正面フェースルート】 (参照文献 新版 日本の岩場 上)
※この書籍は新版、改訂版、新改訂版が存在するが前記二書は全くグレーティングが当てにならない 新改訂版でさ5P以降は当てにならないので、要注意だがルーファイを正しく行えば抜けられる   ( )内は個人的な体感グレード、ロープスケル

1P(Ⅳ 30m)
トポにはⅡ 草付フェースと記載されていた為お気楽モードで離陸するが、出だしより非常に悪かった。岩の処理と言うより草付の処理。スタンスが乏しい為、笹やブッシュへホールドを求め腕力で高度を稼ぎフェースが現れた付近より左上しテラスにてハンガー2本切る  この時点で疑問に思うトポ

1P トポにはⅡ級と記載されていた為お気楽モードで離陸するが非常に悪く出鼻をくじかれる

2P(Ⅳ 35m)
左上へ派生するスラブへ高度を上げる。草付を処理した後と有ってか岩は快適に感じるが恐らく錯覚だろう。脆い上にランナーは2ピンしか取れなかった。左上後は終了点直下を直上。技術的には問題ないがランナウトし岩が脆いのにはトップは非常に神経を使う
終了点はハンガー2本

2P 左上するスラブから直上 ランナウトが凄まじい

3P(Ⅴ⁻ 25m)
この時点から手持ちのトポは無用。
出だし右にはスッキリとしたフェースが見受けられる。直上、左上は草付の脆い岩ライン。明らかにラインは右のフェースだが事前に調べた情報と異なり困惑し右往左往。
直接右にトラバースしてからフェースへ移行するラインは悪そうに感じた為、4~5m上部に有るブッシュ帯まで高度を上げてから右のフェースへ移行。フェースは快適だがランナウト。ブッシュの処理から岩へと形状が変わる為、切り替えに非常に神経を使った
終了点 リング2 RCC1 残置1

3P 終了点よりフォローを迎え入れる バックのカールボーデンが美しい

4P(Ⅴ⁺ 40m)
ルート上の核心ピッチ。終了点より帯状ハングの切れ目目指し高度を上げるがハング下までも非常に悪い。ハング下まではこのルートに関してリングが多く設置されている様に感じた。
ハングの処理は泥混じりの壁の為非常に悪い。ハングを抜けてからも脆い垂壁の処理へ変わる為、終始神経を使うピッチ。

4P ルート上の核心ピッチ ハングの処理が非常に悪い更に上部垂壁も悪い

5P(Ⅲ⁺ 50m)
トポが全く信用出来ない為、弱点を選び高度を上げる。
しかし下部4Pまでと考えると明らかに傾斜は落ちる
階段状のフェースの処理
終了点はカム2つにて

5P 核心を抜けると傾斜は一気に緩み快適だがランナウト

6P(Ⅲ⁺ 45m)
草付、所々露岩帯の暖斜面の処理
終了点は細いブッシュ、笹を束ねて

7P(Ⅲ 45m)
ブッシュ、笹付帯の暖斜面を左上し上部に見える顕著なハング下まで
ハンガー1本にハーケン1本打ち足し切る

7P 顕著なハング目指し左上 快晴の空に岩肌が映える

8P(Ⅳ⁻ 50m)
笹に覆われたルンゼ状へ高度を求め、上部は右上に有るリッジ目指す。上部リッジへ移る個所からは傾斜は強まるがホールドスタンスは問題ない
ハンガー1本と残置ハーケンにて切る

8P 草付ルンゼじょうから上部右のリッジへ 高度を上げるにつれ立ってくる

9P(Ⅲ⁺ 50m)
徐々に草付へと変化して行く。ラインは複数取れる感じだったが、巨大な露岩より右上する様に高度を上げる
ブッシュを束ね切る

10P(Ⅲ⁺ 35m)
上部スカイライン目指し高度を上げる。ほぼブッシュ帯の為ここでアプローチシューズへ履き替える。所々露岩が有り思いのほか悪い。高度を上げ完全な藪になった所でロープを延ばす
ブッシュにて切る。
この時点で事実上の登攀終了。ロープをたたみ25m程藪を漕げば中央壁の頭へ。

中央壁の頭にて登攀終了
しかし上部 堅炭尾根まではまだまだ遠い

中央壁の頭より堅炭尾根は目視するに、はるか遠くに感じるが薄いブッシュと露岩を処理し15分程詰めに喘げば堅炭尾根へ突き上げる。
大雑把にガチャを片付け下山。中芝新道は廃道と有って、自然へ帰りつつ不明瞭。初見ではGPSが無いと非常に不安に感じる。恐らく10年後には完全に自然へと変わるだろう。

下山は廃道となった中芝新道より 既に一部は自然へ帰った

芝倉沢へ降り立つと雪渓は崩壊が進んでいた。出合直前にて高巻から50m連結にて懸垂し沢床へ降り立ち出合まで。やっと一般道へ合流し安全圏へ。

今回の山行は全くトポが当てにならず、終始ルーファイを屈指しながらの登攀となり非常いに精神的にはストレスが多かったが、情報に頼らずルーファイしながらラインを見出す登攀は久しぶりに楽しかった。

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