槍ヶ岳 西稜

2024年8月20日~21日  メンバーたぬき夫妻

天候 20日 晴れ後雨 21日 快晴後晴れ

登攀スキルより天候判断が鍵を握るであろう高所登攀。直前まで天気予報をチェックするが予定していた日程は悪天予報。予報を見る度、やるせない気持ちで満ちる。
もはや悪天候の為、山行を中止しふて寝を決め込もうとしていたが山行前日に天気予報は明転。
そうなれば急遽準備をし直し、高所登攀を楽しみに槍ヶ岳へ行ってきました。
今回目指すルートは槍ヶ岳 西稜。最近注目を浴びるようになった西稜は子槍から始まり曾孫、孫、と3つのピークを踏み最後は4つ目のピーク槍ヶ岳山頂へ突き上げる。
これを3000m上で登攀する爽快なルート。登攀する以前に想像するだけでも楽しみだ。
日程確保は予備日、停滞日を含め4日間。天気を考慮し現地判断し山行を実施する予定で挑む。
【20日】
新穂高よりアプローチ。当初の予定では槍ヶ岳山荘まで一気に高度を上げベースを張る予定だったが出発時予報を確認すると正午より雨の予報な為、とりあえず中継地点である槍平小屋まで進み再度予報を確認してから更に進むか判断する。
お盆休み明けの第一週と有って混雑は少ないと思っていた新穂高無料駐車場だが8割程埋まっていて内心驚く。
すっかり陽が昇ってからアプローチ開始。久しぶりのアルパインに心躍りながら足を進めるが、最近では日帰り装備が多かった為久しぶりに幕を背負ってのアプローチはザックが肩に食い込み体力的にキツく感じる。
正午前には槍平小屋へ到着。再度天気予報を確認しようとするも電波が入らず確認できない。空を見上げると晴れてはいるものの稜線は既にガスに覆われ始めていた。
時間的にはかなり早いが、状況判断から一日目行動終了とする。
幕を張り終える頃にはさっきまで晴れていた空は暗転し雨粒が幕を叩く始末。欲張って槍ヶ岳山荘まで行かなくて安堵しながら早めの就寝。

午前中は晴れていたが正午から稜線はガスに覆われ雨粒が幕を叩く始末

【21日】
槍平小屋付近は携帯の電波が入らず最新の天気予報を確認出来ない為、前日出発時点の予報を頼りに行動開始。前日の予報では正午まで天気が持つ様だったため、槍ヶ岳山荘付近で日の出を迎える算段で1時より行動開始。
暗闇の中、ヘッデンの明かりを頼りに高度を上げて行く。樹林帯を抜け森林限界付近まで達すると雲一つ無い夜空に煌々とした月が登山道を照らす。静けさに包まれ月明かりが美しく山を体全体で感じるかの様で心地良く高度を上げ槍ヶ岳山荘へ。予定では、日の出少し前に到着を予定していたが、思いのほか早く到着。
偵察無の初見で暗闇の中取り付きへ向かうのはリスクが大きいので、山荘付近にて1時間程仮眠を取る。快晴無風とはいえ3000m地点での停滞は凍えるようだった。
周囲が明るくなり始めてから取り付きへアプローチ開始。

日の出と共に西稜取り付きへアプローチ開始

【アプローチ】
槍ヶ岳山荘ヘリポート脇よりアプローチ。序盤は薄い府に後に導かれ右の壁沿いにトラバース気味に進みガレ沢を下る。ガレ沢は非常に不安定で悪い。例えると滝谷のC沢位に感じた。

非常に悪いガレ沢をトラバースを交え下降して行く

途中子槍南壁に向かうバンド状が現れるがそのままガレ沢下ると、右手に大きな一枚岩が現れる。一枚岩が現れたらガレ沢から離脱し子槍基部をトラバース気味に進み回り込めば取り付きへ導かれる。大きなテラスが有り上部には顕著なくの字ジェードルが広がるので明瞭。
個人的な感覚では距離は思いの外短かった。初見で慎重に進み、時間的には30分程だった。
【槍ヶ岳 西稜】( )内は個人的な体感グレード スケルな為参考文献とは若干異なる(参考文献 アルパインクライミングルートガイド北アルプス編)
1P(Ⅳ⁺ 30m)
スラブの処理から高度を上げる。出だしからスラブの処理は嫌らしく感じる、更にランナーが取れない。15m程ランナウトし中間地点のハング帯まで。やっとランナーが取れ安堵。ハング帯は左の岩の切れ目の凹角状へラインを取り高度を上げる。ルート全体を通し岩が非常に脆いので、終始岩に対しては神経を使いながらの登攀となる。

1P 出だしよりいきなりのランナウトに緊張 ハングを越え凹角へ

2P(Ⅳ⁻ 30m)
脆い凹角状にラインを取り上部に見える顕著なくの字ジェードル基部まで。終了点は狭く足場も悪いのでハンギングになる。

2P 凹角状の処理から上部ジェードル基部まで

3P(Ⅴ⁺ 20m)
ルート上の核心ピッチ。出だしがかなり悪い。コーナーのオフィズスの処理の為、体全体のフリクションが効きにくい。残置は豊富な為、出だしは迷わずA0で抜ける。上部はフィンガー~ハンドのジャムが良く決まり快適。ジェードルを抜けハング直下にてハンギングで切る

3P ルート上の核心ピッチ 出だしのオフィズスのの処理が嫌らしい

4P(Ⅲ⁺ 30m)
大ハングを上部に見据え右に乗り越し高度を上げれば階段状のリッジを辿り小槍のピークへ突き上げる。出だしの屈曲と子槍のピークでの屈曲が相成りロープの引きが重く感じられた。

4P 大ハングを右から巻き階段状のリッジを処理すれば子槍のピークへ突き上げる
子槍のピークにはクライマーにしか持てない表札が有る

【懸垂】
子槍のピークから5m程クライムダウンし残置グルグルにて60mダブル2本連結にて懸垂しコルに降り立つ。50m連結でも問題無。

孫槍のコル目指し懸垂 高度感抜群

5P(Ⅲ⁺ 30m)
曾孫槍の処理。リッジ状を処理し高度を上げ上部で右上気味にラインを取った為ロープの流れが悪く残置にカムで補強し切る

5P 曾孫槍の処理 子槍対岸からは急峻に見えたが登攀すると意外と寝ている

6P(Ⅲ 40m)
直下の曾孫槍のピークを踏み孫槍基部まで歩く。
7P(Ⅲ⁺ 50m)
孫槍基部からだとラインが読みずらかった。フォローに曾孫槍からラインを確認してもらい迎え入れる。 リスクは有るが弱点である崩落個所へラインを取る。非常に緊張を強いられる区間の処理だった。上部はガチガチのフェースで問題無。孫のピーク直下に古い残置が有った為ピッチを切る

7P 崩落地点から離陸 非常に緊張を強いられた 上部は階段状で問題無

8P(Ⅲ⁺ 20m)
孫のピーク直下で切った為、孫の処理から。左から抜ければ快適ピークにはラペルステーションが設置されていた。そのままクライムダウンし僅かな痩せ尾根を歩き大槍基部まで

孫槍のピークからクライムダウン 両側がスッパリ切れ落ち高度感が尋常でない

9P(Ⅲ 60m)
大槍基部から上部に見えるピークを目指す。途中右手に一般登山道からの登山者を横目に高度を上げる技術的には問題ないが浮石が多い事には終始神経を使った。

9P 槍ヶ岳ピークへ向け突き上げる爽快なピッチ

最後は槍ヶ岳山頂へ突き上げる。終了点が名峰 槍ヶ岳ピークで有る事は感極まり無い。

槍のピークにて 終了点が槍ヶ岳山頂とは爽快

下山は一般道より。

下山時 槍の穂先を望む
快晴に感謝を込め下山

当初は3日間の行程を予定していたがベースで有る槍平小屋へ戻り時計を見ると正午を過ぎたばかり。翌日の天気にも不安が有った為そのまま下山しました。
二日目は行動開始から非常にハードな行程となったがその分比例した山行を満喫出来ました。

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