2025年3月8日 メンバー たぬき ゲンちゃん ISK
天候 晴れ後ガス
異常気象により目標にしていた山域は雪に閉ざされる。計画していた山行は軒並み中止を余儀なくされ、登攀難民となる。
そうなれば、抜群の安定感の有る八ヶ岳へ難民を解消に山を楽しみに行ってきました。
今回のルートは過去に単体で何度も訪れた摩利支天沢大滝。阿弥陀岳北西稜。
しかしこの二つのルートを継続した事は無かった。氷から雪稜を経て阿弥陀岳のピークへ突き上げるライン取りは美しく、何時か登攀していたいと思っていたが機会が無く順延していたが、ようやく機会が訪れ挑戦してきました。
行程時間が長くなる事から、摩利支天沢大滝付近にて夜明けを迎える算段にて早めのスタート。ヘッデンの明かりを頼りに通い慣れた一般道を辿り摩利支天沢大滝の分岐
点より一般道を離脱。 トレースに導かれ快適に大滝前衛滝まで。此処で夜明けを迎える。最終準備を整え登攀開始。
前衛滝は殆ど埋没し雪壁の処理の様だった。雪田を詰め摩利支天沢大滝へ。
【下記は気象条件、積雪、着雪の状態により難易度が変化するが現日の状況からの体感グレードを記載する】
【摩利支天沢大滝】
(Ⅴ 25m)シーズン後半と有って立派に育つ。と言ってもバーチカル。粘着有る氷と思いきや、寒気が入った為か氷質は硬かった。出だしとしては出鼻をくじかれる感じだ。ゲレンデアイスで無いので体力温存を考慮しテンを交え抜け、雪田上部の氷塊でにてスクリュー2本で切る。

【大滝上部から北西稜まで】
摩利支天沢大滝を抜ければロープの必要性はあまり無いと感じた。雪面を約1P程詰めると複雑な地形が広がる。しかし方位を確認すれば明瞭で左上に見える稜線目指し高度を上げる。弱点はルンゼ状だったが吹き溜まりのせいか腰ラッセルの為進まない。草付の急斜面より北西稜へ高度を上げる。この区間の処理も思いのほか悪かった。
北西稜に乗り上げる直下は雪壁の処理と言う表現が有っている様に感じた。
何れにせお短い区間だが北西稜へ進路を取るにはルーファイ能力が試されるだろう。

【阿弥陀岳北西稜】
森林限界直下にて北西稜へ乗り上げる。少し高度を上げれば前方には北西稜の核心部である岩峰が聳える。第一岩壁基部まではナイフリッジの雪稜を詰める。ナイフの刃先の通過では無く右側面をトラバースする様にラインを取る為、見た目より容易。取り付き基部少し手前に雪質が不安定な所が有った為、この区間の通過のみ念のたロープを出し第一岩壁基部へ。

1P(Ⅳ⁺ 60m)
第一岩壁基部よりスタカットで高度を上げる右からトラバースしカール状のミックス壁へラインを取る。着雪が多くスタンスを拾いにくい。草付、雪面にアックスを打ち込み慎重に高度を上げる。ランナウトする為非常に緊張を強いられる。イボイノシシやアイスフックが有れば有効に感じたが持参しなかった為ランナウトに耐え抜ける。ミックス壁を抜けると再びリッジへ乗る。
50mでは、第二岩壁基部まで到達出来ない為、残置を補強しいったん切る。第二岩壁基部まで残り10m程。一旦ピッチを切ったがランナーは取らず第二岩壁基部まで行ったため1Pとし記載する。

2P(Ⅲ⁺ 15m)
終了点より左に走るバンドをトラバース。バンドは狭く足下は切れ落ちているので慎重に通過。ハンガー2本で切る。
トポによっては記載の仕方が分かりにくいが左に走るバンドが正解。

3P(Ⅴ⁻ 25m)
出だし小垂壁を処理し右へトラバースすれば核心である凹角のスラブ壁。着雪が酷くスタンスを拾うのに難儀。右側壁にホールドを求め、A0を多用し抜ければ直ぐにハンガー2本が現れピッチを切る。過去の記憶から着雪が少なければそれなりにスタンス、ホールドが有ったように感じた。状況次第で体感グレードは変わる。


ロープをたたみ雪面を100m程詰めれば摩利支天へ突き上げ一般道と合流。少し歩けば阿弥陀岳のピークに至る。
下降は中岳のコルから一気に下る。気温が低く夕刻に近かったが雪面はクラストしていた為、雪崩の心配なく下山。

冬季は状況次第で難易度が大幅に変化する。当初予定していた行程時間より大幅に時間を費やしてしまった。天気予報では正午過ぎから下り坂となっていたが若干天候の崩れが遅れた為、稜線上で悪天に捕まらずに済んだ。改めて慎重に山行を行おうと感じた。